医師の皆様に対して、皆様自身が医師として有意義な人生を送っていただくための相談や勉強会、交流会、情報提供などを目的としたコミュニティです。

合同会社パラゴン 産業医 櫻澤博文先生

櫻澤博文先生のご経歴

産業医科大学卒業後、京都大学大学院に働きながら通学。社会健康医学修士号や医学博士号も取得。その後、法科大学院に通いながら世界的経営コンサルタント企業にて“ストレス・マネジメント”体系を練成。“ストレス・マネジメント”体系は多くの企業の労務管理を飛躍的に変革させている。現在は合同会社パラゴンの代表社員として「ストレスチェック制度」導入支援中(仔細はホームページ参照。日本産業衛生学会認定指導医、産業医科大学認定メンタルヘルスエキスパート産業医、日本労働安全衛生コンサルタント会神奈川支部理事。
著書として『「メンタル産業医」入門』(日本医事新報社)
「メンタル不調者のための 復職・セルフケアガイドブック」(金剛出版社)

医師としての自己実現に向けて-メンタル産業医入門 刊行~

 専門科選択に際し、または退局や更には転科に際し、国家資格である「キャリアコンサルタント」による職種選択や技能開発に関する相談・助言が得られる医師を対象とした人材紹介会社は多くはありません。いや、まれです。大手だと条件選択というコンピューターマッチングという機械的な選択でしかありません。中にはある意味「ブラック業者」と記述しえましょうか。その医療機関への就労を希望する医師らの履歴書を何十も広げ、医療機関側に選択させることで、その医療機関側の自己責任にしているところさえあります。筆者は、業者にこの「キャリアコンサルタント」という国家資格を取得し、きちんとキャリアコンサルティングでいうところの「自己概念」・・・その医師の価値観に応じた自己実現を、責任をもって支援するような役目を果たして欲しいと述べる立場です。何しろ職業的発達、知的発達、情緒的発達、そして社会的発達で語られる人格面での「発達」を大きく左右しえることに適切な職業や職種選択があります。学生時代に感じた職業人としての思いと医師として働く中で味わったことが違うことは往々にしてある話です。「キャリアアンカー」という、いわば職業観・・・実際に働いてみて考えるに至った職業人としての自己実現への思いとでもいうのでしょうか・・・医師一人ひとりの、そのかけがえのない仕事への誇りや情熱は異なるもの。それをくみ取るには力量が必要です。あいにくその力量ある医師紹介業者は知る限りわずかです。そこで今回、人生をかけるにふさわしい業者かどうか判別できるようにと日本医事新報社から『ストレスチェック面接医のための「メンタル産業医」入門』を2016年9月22日付けで刊行させてもらいました。

読者の皆様。ここで“?”と感じられたでしょう。「なぜ産業医入門?」と。この「産業医」。昭和時代には“でも しか産業医”と言われていました。今も“臨床崩れ”や“メンタル不調を起こした医師のいく場末”という認識が残っているのかもしれません。何しろ1983年(昭和58年)当時、労働安全衛生規則14条で定められた「産業医の職務」は以下のわずか3項目に過ぎませんでした。

① 健康診断の事後措置
② 衛生教育
③ 保健

以上の全ては健康診断の自動判定システムにて、健康診断結果に自動で記載されます。それを実施するだけで済ませられるわけですから、実際に職場に行くこともしない医師でも務められていました。死亡したことさえを知らされに産業医として選任し続け、報酬を支払い続けさせられていた会社もありました。

 時代が大きく変わったのは1995年(平成7年)です。産業医の職務に①~③に加え

④ 作業環境管理
⑤ 作業管理
⑥ 健康管理
⑦ 健康教育・健康相談

以上が加わりました。月に一度は職場巡視をして労働者に有害な状況はないのか医的監査が求められるようになりました。また、産業医に「一定の要件」が求められるようになり、“でもしか産業医”では立ち行かなくなりました。医師会認定産業医資格を取得することが必要になったのもこの時からです。

更に状況が変わったのは2006年(平成18年)のことです。
⑧長時間労働者に対する医師による面接指導という、未病状態の労働者に対して、健康面やキャリア面でのアドバイスをするという、コンサルタント的な新しいスキルが産業医に求められるようになりました。

そして2014年(平成26年)になると、
⑨心理的負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)と面接指導ならびにそれらの結果に基づく措置 が産業医の新たな業務に付加されました。
「産業医の職務」は昭和時代の3つから今や9つへと3倍に増加しています。嘱託産業医の報酬も時間あたり1万円から3万円へと増加しない方がおかしい背景は以上の通りです。

 ここで医師としてのキャリアを考えてみましょう。“患者さんを治したい”、“治療して感謝されたい”という“医師としての基本的人権”が、日本の医療社会でどれだけ満足できるでしょうか。西洋医学的治療で治せる疾患は、耐性のない感染症か一部の腫瘍位ではないでしょうか。後は治しているのではなく投薬によってコントロールできたら良い方かと。治せた疾患についてみても、自然治癒力の助太刀をしているに過ぎなかったりします。対象者が80代や90代だと、消費税増税も先送りされた中、矛盾を感じる場面が多いでしょう。そこで大切な視野が日本の姿です。「人口推計」(総務省統計局)をみてみましょう。15〜64歳の人口である生産年齢人口が8726万人にてピークを迎えたのは、今から21年も前の1995年のことでした。2016年4月1日時点の確定値の7,660万人(直近時)と比すると、この21年で12%もの生産年齢人口が失われています。総務省統計局による今後の人口推計からみると、2035年には生産年齢人口はピーク比の73%へと約3割も、2045年には同61%と約4割も生産年齢人口は減少の一途をたどることが想定されています。単純に考えるとわが国の企業のうち20年後には3割も、30年後には4割もの企業は生存出来ず淘汰されかねません。対して企業は労働力確保のために定年延長を企図しています。定年を70歳まで延長すると、直近時でも1,012万人もの労働力が確保可能です。すなわち15〜69歳の人口は8,672万人となり、21年前と同程度の労働力が確保可能になります。仕事に働き甲斐を感じる方や労働を生き甲斐と考える方は多いことでしょう。運動要素もある労働に従事することで、認知症や骨訴訟症防止を含めた様々な抗加齢効果が確保できます。全国規模で考えるならば医療費や福祉予算増加を抑止できるかもしれません。

そこでです。前述⑨は「ストレスチェック制度」を示しています。労働者の心理的な負担の程度を把握するための検査を『ストレスチェック』といいますが、2015年12月から、一定規模以上の企業はこのストレスチェックを実施する必要があることになっています。⑧では月あたりの超過労働時間数が100時間等の長時間労働に従事していた労働者しか医師による面接制度は希望できませんでした。それがこの「ストレスチェック制度」導入にて、一定の基準を超過した希望者全員が医師の面接を受けられるようになりました。ストレスチェックではベンチマークとしてこれまでに得られた全国統計とを比較することで、その企業や部署という集団の、いわゆる〝働きやすさ〞という視点からみた、全国での立ち位置まで把握できるという「集団分析」も実施可能となりました。どのような対策を執ったら、その企業集団は働きやすくなるのかまで考察し、対策を企業に講じてもらうことで、その企業の職場環境の改善がはかられます。
以上において重要な働きをするのが「産業医」です。この世界でも類まれなこの心身両面における健康診断の法的義務化により、わが国の労働者は、心身両面の不調や失調を未然に防止できることが期待されます。これら労働者に対する心身両面への健康支援と、働きやすく活力あふれる快適な職場環境の形成支援にて病気や怪我が減るだけではなく、前向きに仕事に取り組む労働者が増えることで、生産性向上にも寄与できるでしょう。定年延長も現実解になります。企業側にとっても朗報です。企業価値と社会的評価の向上から、広く社会から信頼と尊敬を受けるような立派な会社になれば、労働力確保も容易になりえましょう。全国レベルでみれば、高齢社会対策にも寄与できると期待したいところです。しかしながら亀田高志氏によると、そのような支援が出来る産業医は、全国に1000名程度しかいない推定がなされています。宜しくない業者の中には、精神科医に産業医をさせることで、上記の対応を執らせる短絡的なところがありますが、果たして務められましょうか。
そこで『ストレスチェック面接医のための「メンタル産業医」入門』の出番です。要介護者の支援をすることも大切ですが、要介護者を出さなくするという「一次予防」も大切でしょう。筆者は〝メンタル産業医〞参入の必須条件である「労働衛生コンサルタント」という国家資格の取得支援をしています。合格実績は2桁になっています。中には〝看板〞になる日本産業衛生学会認定専門医認証をも取得した方も出ています。これらの取得方法も『ストレスチェック面接医のための「メンタル産業医」入門』には書いております。幸いなことにこの本はアマゾンでも販売されています。
この文章が、読者の皆様の良い職業人生の契機になれば幸いです。

参考
山田誠二.産業医活動の20年の法的変遷.健康開発 2016;21(1):2-3
櫻澤博文.“失われた20年”を取り戻す産業医という公衆衛生医の挑戦.ドクターズマガジン 2016;197:ドクターズオピニオン

医師キャリ事務局より

櫻澤先生は弊社のコンサルタントが取得している国家資格の「キャリアコンサルタント」に非常に理解があり、我々の人材紹介事業についても評価をいただいている先生です。今回、産業医の企業的価値、社会的評価の向上を願い『ストレスチェック面接医のための「メンタル産業医」入門』を刊行されたことを機に、原稿をお願いしました。産業医業務にご関心のある先生はぜひお手に取ってご覧ください。

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